谷行 ― たにこう ―
- 作者 不明(金春禅竹との説あり)
- 素材 これという出典はないが、山岳信仰、修験道の厳しさと、孝行賛美を見せる曲。
- 場所 前段…京都松若宅 後段…大和国 葛城山
- 季節 秋
- 演能時間 約1時間
- 分類 5番目 霊験物
■登場人物
前シテ・・松若の母
後シテ・・役行者
面:鷲鼻悪尉
装束:頭巾、無色厚板、半切、袷狩衣
ツレ・・伎楽鬼神
前子方・・松若
装束:縫箔、稚児袴、竜扇
後子方・・松若
ワキ・・師阿闍梨
ワキツレ・・小先達
ワキツレ・・山伏
装束:無地熨斗目、 白大口、繍水衣、篠懸、小刀、山伏扇、刺高数珠
アイ・・下人
装束:長上下
■あらすじ
阿闍梨が峰入するため、弟子である松若とその母に暇乞いに来る。風邪気味の母を看病していた松若は、峰入に同行したいと言う。反対する阿闍梨や母に、修行は母の現世を祈るためだと熱心に説いて許しを得る。山伏一行と葛城山に峰入した松若は風邪気味になった事を阿闍梨に言う。阿闍梨は峰入の途中でそのような事は言うものではない、旅の疲れだろうからと休むように言う。しかし、他の山伏たちに悟られてしまい、峰入の途中で病気になったものには昔よりの大法によって、谷行を行わねばならないと阿闍梨を諭す。阿闍梨は松若に大法の事を話し、別れを惜しんで谷行を行う。出発の時になっても悲嘆にくれる阿闍梨は、歎きも病気も同じ事だから自分も谷行にしてくれと頼む。他の山伏たちも同情し、松若を蘇生させようと皆々で祈る。役行者が現れ、松若は親孝行の子供だから命を助けると告げ使者の伎楽鬼神を呼び出して松若を助け出し、生き返らせて阿闍梨に渡し、人の目には見えぬ岩橋を渡って去って行く。
■みどころ
- 山岳信仰の峯入りの形を見せ、厳しい掟の様子を舞台で現す。
- 役行者が出る流儀と出ない流儀がある。
■ワンポイントアドバイス
谷行―山岳信仰の掟のひとつで病気になった者は、その時点で谷へ生埋めにする私刑。
■小書
なし
■舞台展開
- 松若の母(シテ)と松若(子方)が登場。地謡前に着座する。
- 師阿闍梨(ワキ)の登場。松若の母に峰入のために暇乞いに来る。風邪気味の母の看病をしていた松若は峰入に同行したいと言う。阿闍梨も母も反対するが、松若は母の現世を祈るため難行の道に出るのだと説くので、しかたなく許す。
- 松若の家に仕える下人(アイ)の登場。阿闍梨が峰入のための暇乞いに来て、松若も同行することになったことを述べ、出立の時分になったので用意するようにと言って退く。
- 後見によって、深山断崖に見立てた作り物が出される。
- 阿闍梨、松若、小先達(ワキツレ)、山伏(ワキツレ)が京都から葛城に着く。
- 松若が阿闍梨に風邪気味であると言う。旅の疲れだろうと休むように言う。
- 他の山伏たちが峰入の途中で病気になったものには昔よりの大法によって、谷行を行わねばならないと阿闍梨に言う。阿闍梨は松若に説明し、谷行が行われる。
- 悲嘆にくれる阿闍梨。他の山伏たちも同情し、松若を蘇生させようと皆々で祈る。
- 役行者(後シテ)が現れ、役行者が使者の伎楽鬼神(ツレ)を呼び出す。土木磐石を押し倒し取り払って松若を助け出し、生き返らせて、目に見えぬ岩橋を渡って失せる。