道成寺 ― どうじょうじ ―
- 作者 観世小次郎信光
- 素材 『今昔物語』
- 場所 紀伊・道成寺(和歌山県日高郡川辺町鐘巻道成寺)
- 季節 春
- 演能時間 約1時間40分〜50分
- 分類 四・五番目物 鬼女物 太鼓物
■登場人物
- 前シテ・・・白拍子
- 面:近江女・ 曲見
- 装束:鱗箔唐織−壷折・ 黒地縫箔−腰巻・鬼扇・物着に:前折烏帽子
- 後シテ・・・蛇体
- 面:般若
- 装束:前シテの唐織を被く、打杖
- ワキ・・・道成寺の住職
- 装束:金入角帽子沙門・白綾・白大口・紫水衣・小刀・中啓・数珠
- ワキツレ・・・従僧2人
- 装束:角帽子・無地熨斗目・白大口・水衣・墨絵扇、刺高数珠
- アイ・・・能力2人
- 装束:能力頭巾・水衣・括袴・脚半
■あらすじ
紀州の道成寺では釣鐘を再興することになり、住職は能力に訳あって女人禁制にする事を触れるよう言い渡す。そこへひとりの白拍子が現れ鐘を拝みたいと言うが、能力は断る。しかし舞を見せるという条件で能力は供養の庭へ入る事を許してしまう。喜んだ白拍子は烏帽子を借り舞を舞うが、人々がうたた寝した隙に鐘を狙い引き落してその中隠れ消え失せる。地響きに驚いた能力たちは雷かと思うが、熱く煮えたぎって落ちている鐘を見つけ慌てて住職に知らせに行く。ことの次第を聞いた住職は、この鐘にまつわる昔話を語る。荘司の娘が山伏に恋をしたが山伏はこ寺のに逃げ込み鐘に隠れ、裏切られたと思った娘の執心は蛇体となって鐘に巻きつき山伏を嫉妬の炎で焼き殺してしまった。先程の白拍子はその女の怨霊であろうと、僧侶たちと鐘にむかって祈る。鐘があがって中からは蛇体化した女が現れるが、終に祈り伏せられ日高川へ飛び込み消え失せる。
■みどころ
「安珍清姫」の道成寺縁起が題材。激しい女の恋の執心を描いた作品。死んでもなお残る女の執念の恐ろしさが表現されている。現行曲の中でも最も大掛かりな大曲。舞台中央に数十キロの釣鐘を釣り上げる。<乱拍子>での小鼓の息を詰めた長い間と鋭い掛け声、シテの緊迫した動きと足使いが見所。<乱拍子>の静寂を破り<急之舞>で激しく舞、クライマックスでシテが鐘に飛び入る<鐘入り>は最大の見所。
■ワンポイントアドバイス
狂言の後見によって舞台中央に鐘が出され、舞台天井の滑車に釣り上げられる。シテの鐘入り、また後半の引き上げは、シテ方の後見によって行われる。鐘を落すタイミングはシテと息を合わせての高度な技術を要す。シテは鐘の中では1人で後場の扮装に着替えねばならない。舞台の笛柱と天上中央の金具はこの曲のためだけに取り付けられている。
観世小次郎信光作の古曲『鐘巻』を<釣鐘>・<乱拍子>を際立たせて短くまとめたものが現行の『道成寺』だと言われている。歌舞伎・舞踊など多くの古典芸能で「道成寺物」の原典である。
■小書
赤頭(観世・金剛) 替装束(観世) 五段之舞(観世) 中之段数躙(観世)
無躙之崩(観世) 下略之留(観世) 刻詰之次第(観世) 古式(金剛)