自然居士 ― じねんこじ ―

  • 作者 観阿弥
  • 季節 不定
  • 素材 自然居士伝承
  • 時 鎌倉時代末期
  • 場所 京都東山 雲居寺、後に琵琶湖畔
  • 演能時間 約1時間10分
  • 分類 4番目 遊狂物

■登場人物

シテ・・自然居士
面:喝食
装束:白綾又は色無厚板、白大口(又は色大口)、水衣、掛絡、黒骨金地扇、水晶数珠、物着に後折烏帽子、羯鼓
子方・・女児(流派によっては少年)
装束:紅入唐織(少年の場合は厚板、稚児袴)
ワキ・・人商人
装束:段熨斗目、素袍上、水棹、鎮扇
ワキツレ・・同輩の人商人
装束:無地熨斗目素袍上、水棹、鎮扇
アイ・・雲居寺辺の男
装束:肩衣、半袴

■あらすじ

自然居士が、雲居寺再建の寄進をつのるための説法を行っていると、一人の少女が高座に小袖を供え、亡き両親の追善を乞う。そこへ東国の人商人が現れ、少女を連れ去ってしまう。事情を聞いた居士は、先ほどの少女が供えた小袖が、自分の身を売って得たものだと知り、救出のために説法を打ち切り、人商人を追う。琵琶湖畔から、今まさに船出しようとする人商人に追い付いた居士は、大声で船を呼びとめ、少女を助けるために船に乗り込む。船中での、少女を返す返さないの押し問答の末、居士を連れて東国へ帰る訳にもいかず、少女を返すことにする。人商人は、居士を散々になぶってから少女を返そうと、居士に様々な芸能を所望する。そうとは知りながらも、居士は少女のためと曲舞や簓などの芸能を見せ、ついに少女とともに都へと帰っていく。

■みどころ

居士が人商人との問答でみせる地口(しゃれ)。また船中での緊迫したセリフのやりとりは、古作の能のおもかげを漂わせて秀逸。「中ノ舞」・「クセ」(本曲は舞グセ)・「簓之段」・「羯鼓」と続く、後半のシテの芸尽くし。

■ワンポイントアドバイス

自然居士は実在した人物。また、シテが着ける能面の名称である喝食とは、在俗の少年僧のこと。『申楽談儀』には、観阿弥が演じた自然居士が十二三ばかりに見えたと語られている。

■小書

忍辱之舞(観世)

■舞台展開

  1. 雲居寺辺の男(アイ)が登場し、今日が自然居士の説法結願の日の旨を告げる。
  2. 自然居士(シテ)の登場。居士は説法の高座に上がり、表白文を読み上げる。
  3. 少女(子方)が現れ、雲居寺辺の男に両親の追善のための小袖と文を渡す。男は居士にそれを渡し、居士はその文を読み上げ、少女のけなげさに感動する。
  4. 人商人(ワキ・ワキツレ)の登場。買い取った少女に暇を与えたが、まだ戻らない。少女は親の追善と云っていたから説法の場にいるであろうと捜しにくる。
  5. 人商人は少女を見付け、寺の男が止めるのも聞かずに連れ去る。男は居士に少女が連れ去られたことを告げ、居士は少女が両親の追善のために自身を売ったことを知り、説法を中止して救出に向かう。
  6. 場面は琵琶湖畔となり、まさに船出しようとする人商人に追いついた居士は、大声で舟を呼びとめ、小袖を投げ入れ、船に取り付いて引き止める。腹を立てた人商人は少女を散々に打ちすえる。
  7. 船に乗り込んだ居士は、人商人と問答。居士の弁舌に人商人はたじろぐ。
  8. 居士の強情に根負けした人商人は、船から下りて相談した末、居士をなぶった上で少女を返すことにする。
  9. 人商人は居士に船から下りるようにいうと、うわさに聞いている自然居士の舞が見たいといい、烏帽子を渡す。
  10. 居士はなぶられていると知りながら舞を舞う。
  11. さらに居士は、人商人の所望に答えて、船の起こりを述べた曲舞を舞う。
  12. 人商人はさらに、簓を擦って見せるようにいい、居士は数珠と扇で簓を擦るまねをすると、少女を返してくれるように頼む。
  13. 人商人は少女を返すかわりに、羯鼓を打って見せるようにいう。居士は羯鼓を打ちながら舞を舞うと、ついに少女を取り返し、ともに都へと帰っていく。

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曲目解説