吉野静 ― よしのしずか ―
- 作者 観阿弥
- 素材 『義経記』巻五
- 場所 大和国 吉野山(現・奈良県吉野郡吉野山)
■登場人物
前シテ・・・静御前
面:小面
装束:腰巻・壷折・女笠
後シテ・・・静御前
面:小面
装束:摺箔・緋長袴・長絹・烏帽子・太刀
ワキ・・・佐藤忠信
アイ・・・衆徒
狂言括袴・格子熨斗目・黒変哲・法螺貝
■あらすじ
源義経は頼朝との不和により吉野山へ身を潜めていたが、衆徒の心変わりにより山を落ち延びることになった。防ぎ矢を命じられた佐藤忠信は、偶然にも山中で、義経を追ってきた静御前に会う。忠信の考案した謀計により、静は義経を追おうとする衆徒を、舞を見せて引き留め、無事、義経を落ち延びさせることができた。
■ワンポイントアドバイス
今回は、金春流と喜多流以外の現行台本では省略されている前場を復活させての上演。
■小書
応変之舞(観世)
■舞台展開
- 義経に仕える佐藤忠信(ワキ)が登場。義経は頼朝との不和により吉野山に身を隠していたが、衆徒の心変わりにより、山を落ち延びることになった。一人残って防ぎ矢を仰せつかった忠信は、先ずは追手の様子を窺う旨を述べる。
- 静御前(前シテ)の登場、義経のあとを追って吉野山へとやってくる。今の世を歎き、義経、自分のおかれている境遇を悲しむ。
- 山道で、静が少し休んでいるところへ、偶然にも忠信に遭う。忠信は義経が山を落ち延びることとなり自分は防ぎ矢を仰せ蒙ったことを述べ、静は山路に迷ってしまい暫く休んでいたことを述べる。
- 夥しい貝鐘の音に忠信は何事かと思い衆徒に尋ねると、義経を追い掛ける集会の為だとわかる。忠信は、義経が無事に山を落ち延びられる為の、ある案を思いつき、静と打ち合わせる。忠信は衆徒の詮議へ、静は勝手神社の御前へと赴く〈中入〉。
- 都道者の姿に扮装した忠信は、衆徒(アイ)に頼朝と義経の和解の噂、義経の武勇などを語る。
- 静(後シテ)が忠信との約束を果たそうと、舞装束で現れる。都道者になりすました忠信に所望され、静は法楽の舞を舞い、義経の忠心と武勇を語って舞を舞う【序之舞】。
- 衆徒は静の舞の面白さに時を忘れ、義経の武勇に恐れをなす者も現われた。そうして、忠信の謀計によって、義経は難なく落ち延びることができた。