松山天狗 ― まつやまてんぐ ―
- 作者 不明
- 素材 『撰集抄』巻一「新院御墓讃州白峰有之事」
- 場所 讃岐の国 松山
- 季節 春
- 時 保之乱あと
- 演能時間 約1時間20分
■登場人物
前シテ・・老人
面:笑尉、朝倉尉、三光尉の類
装束:尉鬘、無地熨斗目又は小格子厚板、水衣、緞子腰帯、墨絵扇、杖
後シテ・・崇徳上皇の霊
面:怪士、三明の類
装束:黒頭、初冠、赤地厚板、緋長袴、黒直衣、紋腰帯、笏
ツレ・・白峰の相模坊他
面:大べし見
装束:赤頭、大兜巾、厚板、半切、狩衣、紋腰帯、羽団扇
ワキ・・西行法師
装束:角帽子、無地熨斗目又は小格子厚板、水衣、緞子腰帯、墨絵扇、数珠
アイ・・番の鳶
面:鳶
装束:末社の出立
■あらすじ
西行法師が保元の乱で敗れ、讃岐の国へ流され崩御した崇徳上皇を弔うために、讃岐の国・松山にある御陵を訪ね、その儚い様を嘆き、歌を手向ける。夜、上皇の霊が現われ、歌を愛で舞楽を奏して西行を歓待するが、都での位争いを思い出すうち、逆鱗の姿となるや、白峰の相模坊と眷属の天狗どもが現われて逆臣の輩を蹴殺して上皇のお心を慰めることを誓い、上皇を伴い空のかなたへ飛び去る。
■舞台展開
- 西行法師(ワキ)の登場。位争いに敗れて讃岐の国・松山へ流され崩御した崇徳上皇を弔うため、嵯峨から讃岐の国へとやってくる。
- 辺りに住む老人(シテ)の登場。都を思い懐かしむこと、詠嘆を述べる。
- 西行は老人に案内されて、松山の御陵に着く。昔の栄華と引きかえ、今は人も通わぬ田舎の苔の下になっている様が痛わしく涙し、一首の歌を手向ける。
- 西行は老人に、上皇が存命の折は、いかなる者が訪ねてきていたのかと聞く。老人は、白峰の天狗・相模坊とその眷属以外は誰の参内もない、こういう自分も常はこの御陵を掃き清める者だと言って、消え失せる。
- 毎日 御陵の上を飛び、上皇の霊を慰める番の鳶(アイ)の登場。保元の乱の経緯を語り、上皇の霊は、歌を手向けた西行の志に感謝し、夜遊の舞楽を奏するお心である旨を告げる。
- 夜になり、上皇の霊が西行の前に現れて喜びを伝え、歌を愛で、舞楽を奏し、舞を舞う。
- 舞っているうちに昔の争いを思い出し、逆鱗の姿となる。
- 白峰の天狗の棟梁・相模坊(ツレ)が眷属の小天狗(ツレ)を率いて現れる。逆臣の輩を蹴殺して会稽の恥をすすがせ、上皇を慰めることを誓い、明け行く空 白峰の梢に飛び翔けって失せていく。