松浦佐用姫 ― まつらさよひめ ―

  • 作者 世阿弥
  • 素材 『佐用姫伝説(『肥前国風土記』『万葉集』など)による
  • 場所 肥前国 松浦潟(現・佐賀県唐津市)
  • 季節 冬
  • 演能時間 約1時間20分
  • 分類 4番目 執心物

■登場人物

前シテ・・・里女

面:小面又は若女
装束:鬘、紅入鬘帯、摺箔、紅入縫箔腰巻、紅入腰帯、水衣、中啓、笹、棹

後シテ・・・松浦佐用姫の霊

面:小面
装束:鬘、紅入鬘帯、摺箔、色大口、単狩衣、紋腰帯、真之太刀、鐘(物着:裳着胴になり領巾)

ワキ・・・旅僧

装束:角帽子、無地熨斗目水衣、緞子腰帯、墨絵扇、数珠

アイ・・・所の者

装束:素袍上

■あらすじ

旅僧が松浦潟に着くと、海士乙女が現れて佐用姫と狭手彦との物語を詳しく語る。 海士乙女は僧から袈裟を授かった礼に、狭手彦形見の鏡を見せると約束して姿を消す。 夜もすがら僧の夢の中に佐用姫の霊が現れる。約束の鏡を拝した僧は、そこに狭手彦の姿を見る。 佐用姫の霊は恋慕の執心を嘆き、懺悔に昔の有様―狭手彦との別れ、領巾を振って舟を見送った時のこと、形見の鏡を抱いて投身したこと―を見せる。

■ワンポイントアドバイス

この曲は観世宗家に世阿弥自筆本が伝わっているが、永らく廃曲になっていたのを昭和38年先代左近が「世阿弥生誕六百年祭」に改訂復曲された。 その後昭和58年大槻文藏が世阿弥自筆本に基づいての復曲をし、あと数回に及ぶ試演を試み、平成12年に観世清和により自筆本の形で観世流の正式の演目に加えられた能である。

■小書

なし

■舞台展開

  1. ワキの登場。西国修業の旅僧(ワキ)が松浦潟を訪れ、名所の雪景色を賞でる。
  2. シテの登場。海士乙女(シテ)が釣棹を持って登場し、降る雪の中、玉島川辺の松浦潟に夕月を待つ。
  3. ワキとシテの応対。ワキは名所を尋ねる。シテは鏡を抱いて松浦川に身を投げた佐用姫を祀った鏡の宮への参拝を勧め、また領巾山の伝説(狭手彦が遣唐使として船出する時、佐用姫がこの山上で領巾を振って別れを惜しんだこと)を語り、山上憶良の万葉集を詠吟して、往事を懐旧する。
  4. シテの物語り。シテは松浦姫とも呼ばれた佐用姫の狭手彦との別離の物語を詳しく語る
  5. シテの中入り。ワキが鏡の謂れを尋ねると、シテは妄執の救済の引導を望み、ワキから伝法のしるしの袈裟を授かると、その布施として形見の神鏡を見せることを約束して姿を消す
  6. アイの物語り。所の者(アイ)が登場し、狭手彦の舟出を見送った佐用姫が、鏡を抱いて身を投げたことを語る。
  7. ワキの待受け。海士乙女が佐用姫の幽霊であることを知った僧の夢待ち。
  8. 後シテの登場。鏡を持った松浦佐用姫(後シテ)が登場して、ワキに約束の鏡を示す。
  9. シテとワキの応対。神鏡を拝したワキは、鏡に狭手彦の映像を見る。シテは恋慕の執心を嘆き、懺悔に往事の有様を再現する。鏡を胸に抱き海中へと沈むと見ると、夜も明けかかり僧の夢も醒める。
  10. シテの立働き。シテは舟を見送るヒレフリと、鏡を抱いての狂乱と投身を見せ、ワキの夢は覚める。

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曲目解説