鉢木 ― はちのき ―
- 作者 不明
- 場所 前場/上野国 佐野(現・群馬県高崎市上佐野町)
後場/相模国 鎌倉(現・神奈川県鎌倉市)
- 素材 不明
- 季節 冬(鎌倉時代中期)
■登場人物
シテ・・・佐野源左衛門常世
装束:段熨斗目厚板、浜松刺模様素袍(鉢木用)
後/侍烏帽子、無紅厚板、大口、側次、掛直垂
ツレ・・・常世の妻
面:深井
装束:摺箔、無紅唐織
ワキ・・・旅僧 後/最明寺時頼
装束:角帽子 無地熨斗目
、水衣、数珠、笠
後/金入角帽子(沙門) 白綾、白大口、
水衣、
掛絡、小刀、水晶数珠、状
ワキツレ・・・二階堂某
装束:梨子打烏帽子、白鉢巻 厚板、白大口、 側次、小刀
アイ・・・早打 甲
装束:掛素袍、格子着附、狂言袴、士烏帽子、小刀、竹杖
アイ・・・早打 乙
装束:肩衣、格子着附、狂言袴、小刀、竹杖
アイ・・・早打 丙
装束:格子着附裳着胴、狂言袴、瓢箪、竹杖
アイ・・・二階堂の下人
装束:狂言上下
■あらすじ
大雪の日、常世は旅僧(実は時頼)に一夜の宿を貸す。 薪を事欠く常世は、秘蔵の鉢木(盆栽)を火にくべて暖をとり僧をもてなす。 僧に促されて、一族に所領を奪われて零落した身ではあるが、鎌倉への忠誠心は変らないことを述べる。 ある日、召集があり、常世は鎌倉へと馳せ参じる。 時頼は諸国から集った軍勢の中から頼常世を見つけ出し、本領を安堵し、鉢の木の礼に三つの庄を与える
■舞台展開
《前場》
- 常世の妻(ツレ)が登場して地謡前に着座する。
- 旅僧(ワキ)の登場。信濃の国から鎌倉へ上る途中、上野国佐野に着く。雪が降ってきたので宿を借りることにする。
- 旅僧が、一夜の宿を貸してほしいと言う。常世の妻は、主人が留守なのでと断るが、旅僧は帰りを待つことにする。
- 佐野源左衛門常世(シテ)の登場。降る雪を見渡し、ある人には面白いだろうが、零落した我が身にとっては面白くない雪の日だとなと嘆きつつ、帰宅する。大雪のなかに佇む妻をみて声をかける。一夜の宿を乞うて旅僧が来たので、それを告げようと帰りを待っていたことを伝える。常世は夫婦さえ住みかねる程の見苦しさなのでと断り、十八町先の宿所を教える。
- 夫婦は、大雪のなかを立ち去る旅僧を気の毒に思い、呼び戻しに行く。
- 主人は旅僧に粟飯をすすめ、昔は歌を詠み、詩を作ったりしていたのが、今では粟で身命をつなぐ身であると嘆く。
・後見によって、雪をつけた鉢の木に見立てた作り物が出される。 - 夜が更けるにつけて寒くなる。暖をとる為、薪を事欠く常世は、秘蔵の梅・桜・松の鉢の木を切って火にくべて旅僧をもてなす。
- 旅僧に尋ねられ、主人は名を佐野源左衛門常世と明かし、一族に横領されたことを語る。旅僧がなぜ鎌倉へ訴えないのかと尋ねると、最明寺殿が修行に出られているので仕方がないこと、しかし、落ちぶれていても鎌倉に大事があれば一番に馳せ参じる覚悟であると言う。
- 翌朝、旅僧は「鎌倉へ来ることがあれば訪ねてください」と言って立ち去る。
《後場》
- 早打(アイ)が登場し、関八州の軍勢を鎌倉に召集する命令が下され、諸軍勢が集って来る様子を述べる。
- 装束を改めた最明寺時頼(ワキ)が家来(ワキツレ・アイ)を従えて登場。
- 常世が痩馬に乗って鎌倉へと駆けつける。
- 時頼は、二階堂某(ワキツレ)と太刀持(アイ)に命じて、諸国の軍勢の中から常世を探し、御前に出るようにと言う。
- 時頼は常世に、大雪に宿を借りた僧は自分であったことを明かし、忠誠心を称えて旧領を返させ、秘蔵の梅・桜・松鉢の木を火に焚いた志の返礼に加賀の梅田・越中の桜井・上野の松井田を与える。常世は喜んで、郷里へと帰って行く。