船弁慶 ― ふなべんけい ―
- 作者 観世小次郎信光
- 素材 『義経記』『平家物語』『吾妻鏡』など
- 場所 摂津国 大物浦(現・兵庫県尼崎市大物町)
- 時 文治元年(一一八五年)
- 演能時間 1時間20分〜30分
■登場人物
- 前シテ・・・静
- 面:若女、節木増、孫次郎、小面の類
- 装束:摺箔、唐織着流
- 物着:烏帽子、鬘物
- 後シテ・・・知盛の怨霊
- 面:三日月または淡男
- 装束:黒頭、鍬形、白厚板、半切 、法被、太刀、長刀
- 子方・・・源義経
- 装束:梨打烏帽子 厚板、白大口、側次、太刀、神扇
- ワキ・・・武蔵坊弁慶
- 装束:兜巾又は角帽子沙門、厚板、白大口、水衣、篠懸、小刀、数珠、山伏扇
- ワキツレ・・・判官の従者
- 装束:梨打烏帽子、厚板、白大口、側次、小刀、男扇
- アイ・・・船頭
- 装束:狂言上下
■あらすじ
源義経は、頼朝との不和によりひとまず都落ちし、九州へ赴くため尼崎・大物の浦に着く。弁慶の進言により義経は、ここまで供してきた静御前を都へ帰すことにする。静は涙ながらに別れの舞を舞う。西国への船出―天候が急変、波風が荒くなり、海上には滅亡した平家一門の霊が現れ、平知盛の怨霊が義経に襲いかかる。義経の応戦、弁慶の必死の祈祷によって怨霊は次第に遠ざかって行く。
■小書
前後之替、重前後之替、白式
■舞台展開
- 源義経(子方)、武蔵坊弁慶(ワキ)、判官の従者(ワキツレ)の登場。義経主従は、頼朝との不和により西国へ下向する旨を述べる。
- 尼崎・大物の浦へとやって来る。
・弁慶は船頭(アイ)を呼び出して宿を頼み、西国へ向かう為の船の準備を言いつける。
・義経に供してきた静御前を都へ返すように弁慶は義経に進言する。義経の了解を得た弁慶は静の宿へ伝えに行くことにする。 - 静(前シテ)の登場、都へ帰るようにというのは弁慶の計らいだと思うので、直接に義経に返事をすると言う。
- 静は義経と対面する。義経は、この度、落ち人となり落ち下っている途中、ここまで来てくれたが、今は都に上って時節を待つようにと言う。静は弁慶を疑ったことを恥じる。そして、義経との別れに涙を流し、再会を願う。
- 弁慶は義経の命で静に盃を勧める。弁慶の勧めで烏帽子を着けた静は、門出の舞を舞う。
- 静は、越王勾践の臣下・陶朱公の故事を引いて義経の前途を祝って舞い、義経の身を歎き、別れの舞を舞いう。やがて泣く泣く烏帽子を脱いで、涙に咽せぶ。
- 船頭が船の用意が出来たことを述べる。従者が弁慶に義経が今日は波が荒いので逗留したいという意向を伝えるが、弁慶は、静に名残があってのことと出発を促す。
- 西国へ向け、船が海上に出る。やがて天候が急変し、風が出て波が荒くなり、船頭が必死に船を操る。
- 海上に平家一門の霊が現れ、平知盛の怨霊(後シテ)が義経を海に沈めようと襲いかかってくるが義経は動じることなく応戦する。打物業では叶わないと弁慶は押し隔て、王大明王を請じ数珠を押し揉んで祈祷すると、平家一門の怨霊は次第に遠ざかり、見えなくなる。