国栖 ― くず ―

  • 作者 不明
  • 素材 「源平盛衰記」、「宇治拾遺集」など。
  • 場所 大和国、吉野山中、国栖(現・奈良県吉野郡吉野町新子)
  • 季節 春
  • 演能時間 約1時間
  • 分類 5番目物

■登場人物

前シテ・・漁翁

面:笑尉、朝倉尉
装束:無地熨斗目又は小格子、絓水衣、尉扇、腰蓑、釣竿

後シテ・・蔵王権現

面:大飛出不動
装束:赤頭、段厚板、袷狩衣、半切、神扇

前ツレ・・老嫗

面:
装束:姥著箔または無地熨斗目、無紅唐織、繍水衣、釣竿

後ツレ・・天女

面:小面
装束:摺箔、白大口または色大口、長絹または舞衣、天女扇、天冠

子方・・皇子

装束:赤地縫、緋指貫込大口または緋大口、箔初冠、指貫、単狩衣、神扇

ワキ・・侍臣

装束:白大口法被、男扇、太刀

ワキツレ・・輿舁

装束:白大口、厚板、男扇、輿

アイ・・追手の者

装束:肩衣、括袴、鎗、弓矢

■あらすじ

大友皇子に追われた大海人皇子(清見原天皇=天武天皇)が吉野までやってくる。川舟から下りてきた老夫婦に出会い、皇子に何か食べる物を差し上げてほしいと頼むと、老嫗は根芹を、老翁は国栖魚(鉆)を献上する。その国栖魚の残りを賜わった老翁は、吉兆を占うべく川に放してみると不思議にも生き返ったのだった。―夜も更け静まった頃、妙なる音楽が聞こえ天女が現れて舞を舞い、蔵王権現が激しく神威を示し、天武天皇の世の到来を祝福する。

■小書

白頭(観世、宝生、金春、金剛)、天地之声(観世)

■舞台展開

  1. 侍臣(ワキ)、輿舁(ワキツレ)とその皇子(子方)一行が登場。
  2. 後見によって舟の作り物が出される。
    老翁と老嫗(シテ・ツレ)の登場。家の上に客星、森の梢に紫雲が棚引いているのを見て、高貴な方がおいでになる予兆であるため、もしやと思い船を留めて帰路へ急ぐ。
  3. そこには皇子の一行がおり、老夫婦は一行が高貴なる身分であると見抜く。やんごとなきお方がこのような場所にいらっしゃるうのはさても有難いことだと翁は喜び驚く。侍臣は老夫婦に、皇子は二、三日何も食べておられないので何か差し上げてほしいと頼み、老嫗は根芹を、老翁は国栖魚を献上する。
  4. 供御の残りを賜った老翁は、不思議にも魚が未だに生き生きとして見えた。その昔神后天皇が戦の勝敗を鮎釣りで占った故事にあやかり、このお方が再び都に帰る事が出来るならばこの魚も生き返るであろうと鮎を川に放すと、鮎が生き生きと泳ぐのが見えたため喜んだ。
  5. やがて侍臣が老翁に、追手がかかった事を伝える。老翁は老嫗と共に舟を舁いて来る。
    追手の者(アイ)の登場。老夫婦は、皇子を舟の下へ隠す。追手が舟の下を怪しみ、捜そうとすると、漁師にとってそれは家を捜されるのも同じ事と憤ってみせ、「あの狼藉人を打ち留めよ」と大声を出して、追い払う。
  6. 一行は老夫婦の忠節に感謝し身の拙さを顧み、老夫婦も忝さのあまり感涙する。
  7. 夜も更け静まり、妙なる音楽が聞こえ、老夫婦は消え失せる。天女(ツレ)が現れて、舞を舞う。
  8. 蔵王権現(シテ)が登場。激しく舞い天武天皇の世の到来を寿ぐ。

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曲目解説