鞍馬天狗 ― くらまてんぐ ―

  • 作者 宮増
  • 素材 『義経記』
  • 場所 山城・鞍馬山・京都市左京区鞍馬本町
  • 季節 春・3月
  • 時 平家全盛期 
  • 演能時間 約1時間10分
  • 分類 5番目 天狗物

■登場人物

前シテ・・山伏

面:直面
装束:水衣白大口・篠懸・兜巾、刺高、山伏扇、数珠

後シテ・・天狗

面:大べし見
装束:赤頭・大兜巾・袷狩衣半切、羽扇団

前子方・・牛若丸

装束:縫箔・稚児袴、童扇

後子方・・牛若丸

装束:白鉢巻・白水衣・白大口、長刀

子方・・稚児(数人)

装束:縫箔・稚児袴、童扇

ワキ・・東谷の僧

装束:角帽子、小格子厚板・ 水衣・角帽子、 数珠、墨絵扇、文

ワキツレ・・従僧

装束:角帽子、水衣白大口、数珠、墨絵扇

オモアイ・・西谷の能力

装束:能力頭巾・水衣・括袴・脚半

アドアイ・・木葉天狗(数人)

面:見得
装束:毛頭巾・側次・括袴・脚半

■あらすじ

鞍馬山の東谷の僧が平家の稚児と源義朝の遺児である牛若丸を連れて従僧を伴い花見に出かける。ところが見知らぬ山伏が現れ、一行は興をそがれ花見を中断して帰っていくが、牛若丸がただ1人残り、山伏に声をかけ一緒に花の名所を見て歩く。山伏は牛若丸の境遇に同情し、自分は大天狗であるとあかし、平家討伐のために兵法を伝授すると再会を約束して立ち去る。牛若丸が薙刀を持ち身支度を整え待っていると大天狗が各地の名だたる天狗を率いて現れ、漢の張良の故事を語り、牛若丸に兵法の秘伝を教えて将来の武運を守護することを約束し、再び飛び去っていく。

■みどころ

前場では花見の稚児たちが大勢登場して華やかな舞台が繰り広げられながらも、山伏と牛若丸の心のふれあいが暖かく表現され、後場では大天狗の勇壮な姿と豪快な動きが見せ場となる。

■ワンポイントアドバイス

・天狗物 天狗物と呼ばれる能は「鞍馬天狗」「善界」「車僧」「第六天」「大会」などがある。「第六天」を除いた曲は前半は山伏姿で現れる。山伏とは山岳修験道を修めた者をさすが、能の扱っている天狗物は、「鞍馬天狗」を除いて、自分が最も優れていると高慢甚だしく、あげくの果て、仏法を妨げ、或いは制圧しようと現れるのである。この鞍馬天狗の大天狗は牛若丸の庇護者として、陰の大きな存在として現れる、善意に満ちた天狗である。

・天狗・・・深山に住み顔が赤く鼻が高く空中を飛行する想像上の伝説の怪物。仏教思想に基づいたある象徴とも。

■小書

白頭(観世・金春・金剛・喜多・宝生) 白式(観世) 素翔(観世) 素働(観世) 別習(宝生) 大勢(和)

・白頭  後半 常は赤頭を用いるが、この小書(異式演出)では白頭となり、鹿背杖をついて現れる。老たけた大天狗の様相となる。面も常の大べし見から悪尉などに変わる。悪尉の悪は、わるいの意義でなく大きさをさす。

■舞台展開

  1. 山伏(シテ)の登場。鞍馬山の僧正が谷に住む僧が、鞍馬山で花見があると聞き、自分も一緒に花見をしようと云う。
  2. 西谷の能力(アイ)が登場。花見の会の案内の使者として東谷へ赴く旨を述べる。稚児たち(子方)、僧(ワキ)、従僧(ワキツレ)の登場。
  3. 能力は西谷よりの手紙を東谷の僧へ渡す。
  4. 花見の席。僧に命じられ、能力は小舞を舞う。
  5. 見なれぬ山伏が現れたので、僧は稚児たちを連れて帰る。牛若だけが残る。
  6. 花見の席。山伏と牛若は花見の友となり、友から見捨てられている牛若に同情し、京周辺の花の名所を案内する。
  7. 山伏は鞍馬山に住む大天狗であることを明かし、牛若に平家討伐の為、兵法を伝授すると告げ、明日の再会を約束して飛び去って行く。シテ、牛若の中入。
  8. 木葉天狗(アイ)の立シャベリ。大天狗が牛若に兵法を教えるので、自分たちが太刀打ちの相手をすることになったと互いに稽古をする。
  9. 牛若(子方)が長刀を肩にし登場する。
  10. 大天狗(シテ)の登場。多勢の供天狗の様子が謡によって語られる。
  11. 大天狗は黄石公が張良に兵法を授けた故事を語り、牛若に兵法を授ける。
  12. 大天狗の立働キ。将来の守護を誓い、名残を惜しみつつ去っていく。

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曲目解説