菅丞相 ― かんしょうじょう ―
- 演能時間 約1時間
- 分類 5番目物
■登場人物
前シテ・・菅丞相の霊
面:大童子
装束:指貫・単狩衣、黒頭、中啓
後シテ・・菅丞相の怨霊
面:筋怪士
装束:半切・直衣、黒頭、笏
ツレ・・・火雷神
面:泥しかみ
装束:半切・
法被肩上、赤頭
前ワキ・・・法性坊
装束:角帽子・小格子・水衣、鉾
後ワキ・・・法性坊
装束:角帽子・白綾・大口・水衣、中啓、数珠
ワキツレ・・・従僧
装束:角帽子・大口・縷水衣、中啓、数珠
アイ・・・能力
装束:能力頭巾・括袴、水衣、鎮扇
■あらすじ
帝の御悩のため祈祷をする比叡山の僧正、法性坊のもとに、ある夜不思議な人影が現れる。髪は白いが、面影は若い、それは紛れもない菅丞相(菅原道真)の霊であった。
菅丞相は師匠の前で藤原時平の讒奏により、無実の罪で筑紫へ配流され、無念の死を遂げた苦しみを切々と訴える。
今は帝釈天の憐みで、復讐の鬼と化し、内裏に入り怨みを晴らそうと思うが、僧正に勅命が下っても参内してくれるなと懇願する。しかし、聞き入れられない事が判ると、怒りは極度に達し、炎を起こして消え失せる。
度々の勅命で法性坊は牛車で御所へ向かうが、賀茂川辺りまで来ると、俄かに黒雲立ちこめ、風雨強く、雷も鳴り出す。その雲の中には火雷神を従えた菅丞相の怨霊が現れ、行く手を阻むのでした。僧正は君恩の理りを説き、菅丞相を諭します。
怨みは一端のことと悟った菅丞相は、自ら牛車を内裏に送り届ける。帝の病も治り、菅丞相には天満天神の贈官が下される。
■舞台展開
- [法性坊の登場と修法]
法性坊(ワキ)・従僧(ワキツレ)の登場。帝が菅丞相の配流の怨念のためか悩まされている為、朝廷よりご祈祷を命じられた事を述べる。 - [菅丞相の登場と法性坊との問答]
菅丞相(シテ)の登場。法性坊のもとへ菅丞相が現れる。法性坊から尋ねられて、菅丞相は、無実の罪で筑紫へ流されることに思い悩んで、一夜のうちに黒髪が白髪になってしまったと述べる。 - [菅丞相の物語と述懐]
法性坊から配所での様子を話すよう促され、菅丞相は配所に向かうときの心境、筑紫でのつらい日々を都を偲んで過ごしたこと、このような運命に出会ったのも前世の報いと思って世を恨むまい、恨んでも因果から逃れることができないのが悲しいと語る。 - [菅丞相の懇願と中入]
菅丞相は法性坊に、帝の勅使が何度来ても絶対に参内しないよう頼むが、法性坊が王土に仕える身の為、三度に及んだ場合は参内しないわけにはいかないと応える。菅丞相は火雷神を従えて奇特を見せると言って怒りをあらわにし炎にまぎれて姿を消す。 - [法性坊の能力のシャベリ]
法性坊に使える能力(アイ)が登場し、菅丞相の霊が法性坊のもとへ現れた事の次第を説明する。 - [法性坊の参内]
法性坊が、帝の御悩が重いため、勅に応じて急いで参内する途中。 - [法性坊の待受]
雲行きが怪しくなり、賀茂川と白川がひとつになって越せそうにもない。よく見ると菅丞相の配下達が矛先をそろえて行く手に立ちふさがっている。 - [菅丞相の妨害]
菅丞相が鬼神のような恐ろしさで現れて、配下の火雷神は法性坊の一行に鉾鉄杖で立ち向かってきて白川の東岸へと追い返す。 - [法条坊の説輪と菅丞相の懐柔]
法性坊は菅丞相に事理を説くと、菅丞相は納得し、自ら法性坊を内裏に送り届ける。帝の御悩は治り、天下泰平国土安穏が保たれて、菅丞相は今の世までも天満天神として示現されることとなった。