鉄輪 ― かなわ ―
- 作者 不明
- 素材 『平家物語』巻十
- 場所 貴船神社
- 季節 秋
- 演能時間 1時間
- 分類 5番目物 執心物
■登場人物
- 前シテ・・・女
- 面:泥眼、 深井
- 装束:摺箔・唐織壺折・笠、無紅中啓
- 後シテ・・・女の生霊
- 面:橋姫、生成
- 装束:赤地箔・縫箔、打杖、中啓(修羅扇)、鉄輪戴
- ワキ・・・安倍晴明
- 装束:大口・縷水衣・幣、男扇、風折烏帽子
- ワキツレ・・・男(夫)
- 装束:無地熨斗目、素袍上下
- アイ・・・貴船の宮の社人
- 装束:烏帽子・括袴・水衣
■小書(異式演出)
「早鼓之伝」(中入之伝)
中入りのところ(神の告を聞き、我が家へ帰るところ)で、小鼓、大鼓が、早鼓と云う演奏をする。凄まじい様相で走り去る妻の心象を表している。また前半の出立も変わる。
■舞台展開
《前場》
- [貴船の宮の社人の登場]
貴船の宮の社人(アイ)が登場。毎夜都より丑の刻参りをする女がやってくるが、昨夜不思議な夢の告があったので、女にその旨云うことを話す。 - [女の登場]
夫にと裏切られ、思い悩んだ女(シテ)が、苦しい胸の内の思いや恨みごとを述べながら、毎夜貴船神社に詣でる。 - [女と社人の会話]
夢で見た女は、この女に間違いないと思った社人は「赤い衣をまとい、顔に朱を塗り、頭には鉄輪を巻いて三本のろうそくを灯し、怒る心を持つならば生きながらにして鬼になれる」と夢で聞いた神のお告げを女に話す。最初は人違いだと言っていた女であるが、次第に顔の気色も変わり、凄まじい形相となり、走り去る。 - [中入り]
《後場》
- [安倍晴明と夫の会話]
一方で、ここ数日の夢見が悪い、と祈祷を依頼するため安倍晴明の元を訪れた夫は、晴明に「深い女の恨みによって、今夜にでも命が危ない」と告げられると、先妻を捨て、後妻をとったいきさつを話し、晴明に助けを乞う。晴明は夫と後妻の人形をつくり、供物を整え祈祷を始める。 - [女の生き霊の登場]
晴明が祈祷を始めると、稲妻とともに先妻が生き霊となって現れる。人形に向って恨み言を述べたあと、後妻の髪を手にからめとって打ちたたき、なおも夫の命を奪おうと責めよる。 - [女の生き霊の退散]
夫の命を奪おうと、人形の枕元に詰め寄るが、そこには守護の神々がおり、手出しができない。やがて通力も衰え力なく呪いの言葉を残して、女の生き霊は去っていった。