安達原(観世) ― あだちがはら ―
黒塚(金春、宝生、混合、喜多) ― くろづか ―
- 作者 不明
- 素材 「拾遺集」
- 場所 陸奥・安達原(福島県二本松市)
- 季節 秋
- 演能時間 約1時間10分
- 分類 5番目物 鬼物
■登場人物
前シテ・・・里女
面:深井
装束:無紅唐織・白縷水衣
後シテ・・・鬼女
面:般若
装束:無地熨斗目 又は箔、無紅厚板-腰巻-裳着胴、打杖
ワキ・・・山伏祐慶
装束:兜巾 大格子厚板、白大口、 水衣、篠懸、中啓、刺高数珠
ワキツレ・・・供山伏
装束:兜巾、無地熨斗目、 白大口、縷水衣、篠懸、中啓、刺高数珠
アイ・・・能力
装束:能力頭巾・水衣・括袴・脚絆
■あらすじ
阿闍梨祐慶と同行の山伏が安達が原で宿を借りる。宿の主である女は、自らの境涯を嘆きつつ、糸繰りの技を見せてもてなす。そして、「閨の打ちを見るな」と言い残し、山に薪を取りに出て行く。閨の内を覗き見てしまった祐慶たちは、恐ろしい光景に恐ろしくなり逃げ出そうとする。そこへ、鬼の姿となった女が山から戻り、約束を破った恨みを述べて襲いかかるが、祈り伏せられ、夜の闇の中へと消えて行く。
■小書
白頭・黒頭・長絲之伝・急進之伝
■舞台展開
後見によって萩小屋の一軒屋に見立てた作リ物が出される。
- 阿闍梨祐慶(ワキ)、供山伏(ワキツレ)の登場。廻国行脚の途中、陸奥・安達が原に着く。日が暮れたので宿を借りようと言う。
- 里女(前シテ)の登場。萩屋の中で、自分の生涯を嘆いている。
- 祐慶たちは、女に一夜の宿を乞う。女は一旦は断るが、重ねての頼みに招き入れることにし、庵へと案内する。
・後見によって、枠譯尢ヨが出される。 - 祐慶は、見なれない枠譯尢ヨについて尋ね、糸繰りの技を見せてくれるよう頼む。女は、枠譯尢ヨの前に座り、糸繰りの歌をうたいながら糸車を回しはじめる。
- 女の詠嘆。山伏は仏道への志を勧める。女は手を休め、人の世の儚さ、生業の辛さ、六道輪廻の苦しみを嘆き、糸繰り歌をうたいつつ再び糸を繰り、その糸のように長く生きてしまった自らの境涯に泣き伏す。
- 女は、夜寒となったから薪を持って来て暖めようと言い山へ行きかけるが、ふと足を止め、祐慶たちに「閨の内を見るな」と言い残し、山へ出て行く。
- 能力(アイ)が閨の内を見ようと祐慶に言うが、許されない。能力は祐慶が寝入った隙に、閨の戸を開いて見ると、そこには死骸が山と積まれた凄まじい有様に能力は驚き、祐慶に報告する。
- 祐慶たちは、閨の内の恐ろしい光景から、女が鬼女であるとわかり、逃げ出そうとする。
- 柴を負い、打杖を手に鬼の姿となった女(後シテ)が山から帰ってくる。鬼女は、祐慶たちを呼び止めて約束を破った恨みを述べる。
- 鬼女は打杖を振り上げて襲いかかり、祐慶たちは数珠を揉み、五大明王を請いて祈る。ついに祈り伏せられた鬼女は、浅ましい姿に恥心、闇の中へと消える